*** 回想 「栃木の黒幕」***

愛犬ウエスティ「栃木の黒幕」

 次から次へ目にするニュースは殺人事件。私は押し寄せてくる怒りで急にソファから立ち上がり、窓の外に広がる景色を眺めた。なぜ? と問いかけるだけで答えが出るわけでもなく、いつも見慣れている住宅や中学校の樹々を見ながら怒りをどうにか沈めた。まだ見えない太陽の光が下から濃いオレンジ色の光を放射し、青い空には疎らな雲と鳥だけが影を落としていた。

  • 私は、振り向き彼女に言った。「なあ今日ドライブしない?」
  • 「どこどこ、日光、那須それとも軽井沢?」
  • 「違う、ドライブしながら行き先も話すよ」
  • 「何か、気味悪い」
  • 「最近、柴田哲孝(しばたてつたか)の下山事件を読んだんだけど、それに関係するところ」
  • 「へぇ〜。下山事件って、戦後日本最大の謎とされてい るものでしょう。下山初代国鉄総裁が就任して、すぐに轢断(れきだん)死体で発見されたあれでしょう。松本清張も確か書いているよね」
  • 「さすがだね」

 二人は車に乗り込み、事前に調べた電話番号をカーナビに入力した。進路は宇都宮から北の矢板市。

「日本国有鉄道公社になったのが昭和24年6月1日。下山定則(さだのり)総裁は同年7月5日に日本橋三越で消息を絶ち、翌6日未明、常磐線北千住駅を過ぎ東武伊勢崎線と立体交差するあたりに轢断死体で発見された。その後、自殺の根拠「生体轢断」か、他殺の根拠「死後轢断」か、見解は対立するなど国会、法医学界を巻き込んだ大論争となっている。しかし真相は究明されず、何故か自殺に傾きながら捜査は打ち切られ、迷宮入りし時効を迎えているんだ」

「下山事件は、すでに膨大な資料が明かされ、数多くの人が研究しているんだけど、真相は闇の中なんだ」「事件後の情報は、日本共産党をはじめとする左翼勢力による犯行とされていたけど、公式記録によると吉田茂首相は 昭和26年トルーマン大統領の特使に、犯人は一人の朝鮮人で既に朝鮮に逃亡しており、逮捕できなかったと言っている。この言葉は、真実ではなく米国との何かの駆け引きなのかもしれないね。その後、日本共産党支持者だった松本清張は、研究会を立ち上げ昭和35年発表した本は、占領期日本におけるGHQの謀略と推論している。柴田哲孝はこの推論を否定しているけど」

「その松本清張の本は読んだわ。さっき思い出さなかったけど確か「日本の黒い霧」」

「うん」「柴田哲孝は、祖父の柴田宏(ゆたか)が下山事件に関連していたという身内から発せられた言葉から、膨大な資料や身内からの告白などを集め推論を展開していくんだ。そして事件の重要な人と位置づけているのが矢板玄(くろし)。黒幕の一人」

「本は当時の時代背景を克明に書きながら展開していく。満鉄を受け入れた国鉄職員人員整理、その後に起きる三鷹事件や松川事件、米国による反共の砦化(対旧ソ連・中国、日本内政(反共化))、政治の裏側、吉田茂や佐藤栄作を操っていた日本の黒幕三浦義一、M資金やGHQ内部抗争、なぜ戦後1ドル360円か?戦前の72倍と言う極端な為替になったかなども明らかにしていく」「ちょっと読んでいて怖かったけど、今日行く所、晩年矢板玄が住んでいた実家で現在矢板武記念館。柴田哲孝は平成4年2月に矢板玄に会いにきて証言を聞きだそうとした。真相は話さなかったようだけど」

「矢板玄は、大正4年栃木県矢板市生まれ。栃木県の疎水、国道、鉄道の開発に貢献した矢板家直系の15代目。横浜高等工業学校(現大学)を卒業後、昭和電工に入社し昭和10年頃陸軍電気技師として中国大陸に渡り、満州鉄道の開発に従事。昭和15年支那事変における功績で、弱冠25歳で勲六等瑞宝章を受章。翌年帰国し“聖戦技術協会 アジア産業(後の亜細亜産業)”の社長に就任。亜細亜産業は下山総裁が消息を絶った日本橋三越の近くの通称“ライカビル”に事務所を置く。戦後はGHQ顧問として民生に参画している。矢板家は栃木県の功労者で日本の黒幕なんだ」

 目の前に昔風の家が、矢板玄が矢板市に寄付した矢板武記念館が見えた。車を止めようとしたが「普通の家だし。止めて入らなくてもいいんじゃない」と彼女が言った。私は、何故か同じことを思っていたので、すぐ同調しあやふやな返事をして通りすぎてしまった。

「ねえねえ、パソコンでJALとDCのHPで応募してくれない。当たるとマイルが貰えるみたいから」 と、彼女が大きな声で呼んでいる。仕方なしに本をたたみ、ソファを立ち上がりパソコンの椅子に座る。

「IDとパスワードなんだっけ?」「ここに書いてあるでしょう」とパソコンの画面のファイルを指差した。だったら自分で登録すればいいだろうと思ったが、言ったら最後と自分で言い聞かせ口を噤み、唾を飲み込んだ。

  • 「これで登録完了。あれ明細書って?」 明細書にポイントを当てクリックすると一覧表が表示された。
  • 「あれ、このお金は何だっけ」「エッ! これはあなたのバックでしょう。もう忘れたの」
  • 「アッ!そうか、じゃあこれは何?」「ねえ、これ!」と言いながら後ろを振り返ったが、彼女はいつの間にか消えていた。
  • さすがに我が家の黒幕。真相は闇の中か。

作成:2008/01/17

・柴田哲孝著「下山事件 最後の証言」 出版社 / 著者からの内容紹介

 私の祖父は実行犯なのか?戦後史最大の謎。半世紀を超えてついに核心に迫る親族の生々しい証言。「約束しろ。おれが死ぬまで書くな!」 祖父の盟友にして某特務機関の総師は言った。真相を知る祖父の弟、妹、そして彼も没した今、私は当事者から取材したすべてを語ろう。「あの事件をやったのはね、もしかしたら、兄さんかもしれない・・・・」

 祖父のニ三回忌の席で、大叔母が呟いた一言がすべての発端だった。昭和ニ四年(一九四九)七月五日、初代国鉄総裁の下山定則が三越本店で失踪。翌六日未明、足立区五反野の常磐線上で轢死体(れきしたい)となって発見された。戦後史最大のミステリー「下山事件」である。 陸軍の特務機関員だった祖父は、戦中戦後、「亜細亜産業」に在籍していた。かねてからGHQのキャノン機関との関係が噂されていた謎の組織である。 祖父は何者だったのか。そして亜細亜産業とは。親族、さらに組織の総師へのインタビューを通し、初めて明らかになる事件の真相!

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愛犬ウエスティ 犬の健康は日々の食事管理が大切です

  • 名前:Floren
  • 犬種:West Highland White Terrier
  • 性別:Woman
  • 誕生:2008/2/10
  • 住居:栃木県宇都宮市
  • 好きな人:浅田真央ちゃん

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「犬の健康を考える やんちゃな愛犬ウエスティ 食事で病気を予防」を読んでくれてありがとうございます。皆さんの愛犬が皮膚病などの病気に罹らず健康で過ごされることを願ってます。また本サイトがきっかけで、医食同源、ホリスティック、整腸そしてプロバイオティクスなどの意味を少しでも理解され、飼い主も愛犬も毎日の積み重ねによる健康維持が大切であることを実感できれば幸いです。

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