先尾翼紙飛行機       update '09.02.06
テクニカル・メモ
                       
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はじめに

紙飛行機は「子供の科学」に毎月連載されているので子供の遊びと思われていたり、8才から88才の巾の広い年令に合う趣味と言われていたりしているが、夢中なのはリタイアした高齢者が多い。

紙飛行機は簡単に作り飛ばすことができるが、楽しみながら続けるとその奥の深さに魅了され、仲間との情報交換や交流が面白くなってくる。 紙飛行機を飛ばすには広いグランドが必要であり、雨天や風の強い時は飛ばすことができず性能は天気に左右され、自分が創意工夫して製作したオリジナル機が巾を利かすといった贅沢な趣味である。

実際の飛行機には多くの形状や種類があるが、その中で先尾翼機は前後を逆にして飛行する水平尾翼が前にある飛行機で、英語は「カナード」ドイツ語で「エンテ」と呼んでいる。 カナード、エンテの言葉を直訳すると「鴨」となり、飛行の姿は鴨が飛んでいるようだからと、命名した西洋人の感性と表現の豊かさには感心させられる。 

カナード紙飛行機の飛行の姿と独特な形状に魅せられ楽しんでいるが、この素晴らしさを多くの仲間と共有できれば最高と思いつつ、今までの経験の記録をおこがましいが「テクニカル・メモ」としてまとめた。


        目 次
      
 1. 紙飛行機
       
2. 先尾翼機の種類
       3. カ ナー ド機の説明
       
4. 重心位置          
       
5. 縦 安 定
       
6. 滑空時の揚力と迎角    この項へ移る
       
7. 滞空時間          
       
8. 垂直上昇と落下      
       
9. 翼
       
10. 調整方法         この項へ移る
       
11. 用具と用紙
       
12. 衝突時の負荷       この項へ移る
       13. 機体の小型化       この項へ移る
       14. 3 枚 翼 機      
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15. おわりに                  
         
1.紙 飛 行 機 

1)紙の模型飛行機の分類 

 
紙の飛行機は広告の紙を折って作り、部屋の中で飛ばした子供の時の折り紙の飛行機を思い出すだろうが、紙飛行機は動力を持たない紙製の滑空機(グライダ)であり、大きく次の3種類に分類できる。

@ 折り紙
   飛行機
A4サイズ程度の紙をはさみで切らずに紙を折りながら作る飛行機である。 主に室内にて手先で押し出すようにして飛ばす。  
A 切折り
 (ホチキス)   紙飛行機
比較的厚手の紙をカッターやはさみで切り、折込ながら整形しホチキスで保形する飛行機である。飛ばし方は細い棒先にゴムひもを付けゴムの力で飛ばすゴムカタパルトである。
B 切貼り
  紙飛行機   (紙飛行機)

 
比較的厚いケント紙を切り折り、接着しながら整形し紙飛行機として仕上げる。飛ばし方はゴムカタパルトと全身を使い腕で投げるハンドランチの方法がある。
 一般に
Bを「紙飛行機」と呼んでおり、ここで述べる紙飛行機である。
この紙飛行機は「キリガミ模型飛行機」として戦前にも発行されていたが、ここでの紙飛行機は比較的新しく月刊誌の「子供の科学」に連載されてからである。 (昭和42年から付録として掲載され続いている。) 
    (注) 愛好者によって呼び方は違いがあるし、分類の違いもある。

2) 紙飛行機の種類 
 
紙飛行機の種類は、機体の全てが紙製のものと、翼は紙だが胴体をバルサや木の棒を利用して作る機体もある。
 紙飛行機の
特徴は、自分の好みで色々な形状や種類を比較的容易に作れることから、実際の飛行機に似せた機体やデフォルメの機体、さらに立体機や新しく自分で創作した機体等がある。紙飛行機は空中を飛行させるものを、紙を利用して自分なりの発想で作り楽しむものである。
 またジャパンカップへの競技参加で、高度と滞空性能を向上させた競技用を探求する等、愛好者の目的に合わせて色々な機種を選び製作し楽しむことができる。

 
紙飛行機は「作る、飛ばす、競う」ことができることから多様化し、個人としても団体としても楽しめる趣味であり、大きな広がりをもって愛好者は増加している。
 下図の紙飛行機は多くの種類の一部の機種を写したが、それでも色々な種類や形状があるのが分る。
       @普通機 A垂直上昇機 B双胴機 Cモデル機
       D無尾翼機  
      Eデルタ翼機 Fカナード機 Gタンデム機 H3枚翼機




3)紙飛行機三楽

 紙飛行機三楽として、@作る楽しみ、A飛ばす楽しみ、B競う楽しみであるが、どの段階で楽しんでもよいのである。

@作る楽しみ

 
模型飛行機には色々な種類があるので、これを趣味としている人は大勢いる。その中で紙飛行機は比較的簡単である。用意しなければならない道具も少なく、材料は紙であり製作する部品の数も少ない。費用もかからず、キットを利用すれば初めてでも容易にできて良く飛ぶので気楽に始められる。
 しかし、続けるに従い自分のレベルで独自に設計・製作し飛ばすのが面白くなり、紙飛行機の奥の深さを実感するようになる。
 紙飛行機も実機と同様に翼の枚数で分けることができ、さらに多翼機や複葉機なども設計・製作して楽しまれている。

1枚翼(無尾翼) 2枚翼 3枚翼



A飛ばす楽しみ

紙飛行機は飛ばすことで楽しみが倍加する。
青空の下で紙飛行機を追って空を見て歩くのが健康作りになる。             
 最近では高齢者の中に熱中している愛好者も多く、各地にクラブができて多くの高齢者が中心メンバーとなって活躍をしている。     


B競う楽しみ

 競技はクラブ仲間の記録会からジャパンカップの予選会・本大会等がある。競技内容は滞空時間が主体であるがデザイン等の種目もある。自由に参加して自分のレベルを確認し、情報交換からノウハウの取得と仲間ができる。競うことはレベルアップになり楽しさを実感することになる。

2.先尾翼機の種類 (カナード機)
 先尾翼機は尾翼が前になった一見では前後を逆にして飛ぶ飛行機で、ここでは先尾翼機、カナードまたはカナード機を含めて三通りで呼んでいる。、また推進機がないので滑空機(グライダー)となるが総称的に飛行機と呼ぶことにする。
 
1) 先尾翼機の実機

  
20世紀の始めに世界初の有人動力飛行機を飛ばしたライト兄弟の「フライヤー号」は先尾翼機である。A型、B型と短期間に多くの改良を行い飛行時間と飛行距離が飛躍的に伸びて航空機の基礎を築いた。
 「二宮康明の変形機10機選」の先尾翼カナード「N−965]の中に述べられているように、当初の飛行機には先尾翼機が多くあったが、その後の飛行機は前翼を主翼の後部に移して尾翼となり、プロペラは機首に配置して牽引式となって、現在の一般的に飛んでいる姿となったしかし操縦方法は、当時の飛行機の方法を基本的に踏襲しているとの事である。
 そして特別な目的を持った一部の飛行機のみが先尾翼機として開発生産されたので、少機種・少機数なのである。
 先尾翼機の実際の機体は視界の良い空力的に抵抗の少ない航続性能の優れた飛行機になり得る特長があるとされているが、縦安定で前翼に揚力が必要となる。
 飛行機は滑空性能が大事であり、着陸時は安全上から低速飛行が必須の条件となる。先尾翼機は前翼に揚力が必要なために着陸速度が速くなり、着陸時の高い操縦技術と長い滑走距離が要求される。
 それで特殊な用途のみに開発され少い機種と機数になっている。そして滑空性を重視するグライダーには見当たらず希少なのである。

 戦時中やその後に製作した飛行機のうち、試作機を含めてカナード機を選別したので少数であるが参考に掲載する。
     
No 機     名 製作国 推進方法
@  アンブロシン(AMBROSINI) SS4  イタリア プロペラ推進式
A  ペイアン(PAYAN)Pa22  (ドイツが接収した) フランス プロペラ索引式
B  カーチス(CURTISS)XP−55  アセンダー アメリカ プロペラ推進式
C  震電(J7W1)九州局地戦闘機(アメリカが接収) 日 本 6枚プロペラ推進式
D  サーブ37ビゲン(SAAB37 VIGGEN) スエーデン デルタ翼 ジェット式

 
 

2) 折り紙飛行機のカナード機

折り紙飛行機の「イカ折り紙飛行機」は前翼が付いているのでカナード機である。
 これは昔から作られ飛ばしていた折り紙飛行機の代表的な機体の一つである。実際に折って作り飛ばしてみると実に良く飛ぶので、現在も伝承の折り紙飛行機として愛好されているのだと思う。
なお、折り紙飛行機の最適な本を参考に載せておく。
   −超本格!− 「おりがみ飛行機ベスト30」
       中村榮志 著  東京書店
 発行

3)色々な形のカナード紙飛行機
 カナード機は色々な機体の形状があり、普通機以上の種類が作り出されていて、「二宮康明の変形機10機選」にもカナード機が数機掲載されている。
 紙飛行機はグライダーであり、カナード機は滑空の滞空時間では不利となる。滞空競技で飛ばすことは少なく、変形機として色々な形が製作し定着して楽しまれている。
 愛好者はカナード機の滑空姿やユニークな形状から一度は製作し飛ばした経験があると思うが、ここにあげた写真のカナード機はその内の一部の機種であり、上方を機首の飛行方向にして並べてある。

           
3.カナード機の説明 
1)機体各部の名称 
 カナード機は前後逆にして飛ぶことを除けば、実物のグライダーと飛行の基本は同じである。

しかし、グライダーの翼にある舵面が紙飛行機には無いので構造はシンプルである。







2)カナードのモデル機 
カナードのモデル機の図面を添付する。添付の写真がその完成した機体であり適正に作り調整すれば上昇、滑空とも満足が得られると思う。
 
紙飛行機の製作は生産技術だ。道具と材料と工夫だと教わり自分に適した道具や紙を選びカナード機を製作して楽しんでいる。
ここでのカナード機は本機をモデルに説明を進めていく。
本機は図面で分るように、全長175mm、全巾172mmで、20番手の糸ゴム50cmのゴムカタパルトを使い、滞空時間競技にも結果が出せるように縮小・軽量化と造形美を求めた機体である。


3)定常滑空姿勢
カナード機も普通機と同じく定常に滑空飛行している時は、釣合いの状態にある。すなわち、揚力と機重は釣合いバランスして適正な速度と迎角で滑空飛行している。 
W (機重)=5.5g(モデル機)
Lf  W×a/J  
L
f (前翼揚力)=5.5×0.23=1.265g

L W− Lf 
L (主翼揚力)=5.5−1.265=4.235g
  定常滑空時のモデル機の前翼と主翼の揚力は上記の配分であり、機重 W空力中心距離J、a は後述の「滑空時の揚力と迎角」の数値を利用した。                              

   4) カナード機の図面
 先尾翼機の機体図面を「カナード図面」として添付しました。全長などの寸法で尺度を合わせて利用下さい。
 完成機の質量は5.2g±0.3であり、用紙は PHO 180 (漂白前の紙) を使用しています。 

          

.重心位置
 全機空力中心位置は翼の形状や配置により変動する。安定して滑空するには、全機空力中心の前方になるように機体の重心を設定しなければならない。
 
翼の配置と重心位置
行機の各タイプでの重心と全機空力中心の位置を略図する。
@ 一般の飛行機は尾翼が小さく主翼のみで機体を浮かせるので、全機空力中心位置は主翼前方にある。
A 紙飛行機の普通機は尾翼が大きく機体を浮かせる働きもするので、全機空力中心位置は後退する。
B 紙飛行機の垂直上昇機となると、更に尾翼も大きくなり全機空力中心位置は主翼の後縁付近となる。
C 主翼と尾翼が同じ大きさのタンデム機(串型機)になると全機空力中心位置は両翼の間になる。
D 前の主翼は縮小し前翼となり、尾翼が機体を浮かせる主翼として役割が交代して、カナード機となり全機空力中心位置は後ろの主翼の前方になる。
E 前翼が更に縮小してついに無くなり、無尾翼機となり併せて前部胴体の頭部をカットする。全機空力中心位置は主翼の前方に移る。
この無尾翼機に尾翼ができると@の形状に戻りまた繰り返すのであるが、安定した滑空をするために重心位置は空力中心位置の前方にある必要がある。
) 重心位置のグレーゾーン
下図は普通機とカナード機に上下に分割して片半分で図面化した。普通機は左方向に進み「前進」とし、カナード機は右方向に進み「後進」とした。
各翼の配置は同じにした。主翼、尾翼、前翼の空力中心は平均翼弦長の前縁から25%の位置にあるとし、全機空力中心位置はその各翼の空力中心位置に翼面積を加えて求めたものである。
そのため、形状が同じでも前進、後進で全機空力中心は位置が違い、重心は静的な縦安定を得るために、全機空力中心位置より前方になければならないが、それを矢印と重心マークで重心のあるべき位置を示した。
飛行機は形状が同じでも前進、後進で全機空力中心位置が違ってくる。それをeで表したが、このeの範囲の重心位置はグレーゾーンとなり、前後どちらにも飛ぶことができずただ降下するのみである。
また、全機空力中心位置に重心位置が接近していると静的な縦安定は弱く不安定な飛行となり易いのでどのくらい前方にあるべきかを、カナード機の縦安定として具体的に検討する。 
 

. 縦安定 

1)縦安定の必要性

安定は航空機が飛行する上で大事な要件で、縦の安定(ピッチング)・横の安定(ローリング)・方向の安定(ヨーイング)と三つの安定があり紙飛行機も同じである。 横の安定は主翼の上反角や後退角、方向の安定は垂直尾翼が受け持つので調整は比較的容易であるが、紙飛行機は飛行中にコントロールができないので縦の安定の調整が重要となってくる。

この縦安定(静的縦安定)は正常に飛行している紙飛行機が突然に上下の気流の中に入っても、機体自身で姿勢を修正して飛行を継続するに必要な要件であり、これはバランスが崩れても正常な飛行に姿勢を戻す復元力を持っていることを示すことにもなる。

 例えば、飛行中に突然上昇気流の中に入ると、機首を下向きにして揚力のバランスを元に戻して飛行を続けていくことで、この復元力は適正な重心位置の設定で決まるので具体的に考えていく。

 

2)重心の位置設定

 揚力は L=1/2ρν2SCL で翼の空力中心に働くとして、上昇気流に入った時の揚力の増加分と縦の安定の関係を考える。
    (ρ:空気密度v:機速S:翼面積CL 揚力係数 )          

機体が上昇気流に入ると主翼と前翼の迎角は増えるので揚力が増加する。この増加分ΔLは上昇気流による迎角の増加分Δαによって揚力係数が増加し、この揚力係数の増加分ΔCにより揚力が増加するのであるが、主翼・前翼とも同様である。


主翼の揚力増加分は: ΔLw=1/2ρv2SwΔC
 
前翼の揚力増加分は:  ΔL=1/2ρv2SfΔC
 
上の2式の/2ρv2ΔC
共通なので、主翼と前翼の揚力増加分は結果的に翼面積に比例する。

この両翼の揚力増加分のバランスで全機空力中心 b の位置を求める。

ΔLw×b=ΔLf×(J−b)  ⇒  Sw×b=Sf×(J−b)  となり
            
Sw×b+Sf×b=Sf×J である。
 
bで整理すると   b=J×Sf/(Sw+Sf)   このbの寸法が全機空力中心の位置である。
なを、
Jは前翼と主翼の空力中心位置の距離である。

 縦安定のためには、重心位置は全機空力中心 b より前方になければならず、その寸法は a である。
 その差の寸法は
n=a−b nの長い方が復元はあって縦安定を増すのである。図はそれを図表化したものであり、縦軸はJで割り無次元化し、丸印は製作したカナード機紙飛行機をプロットした。 そのプロットに合わせて 0点を基点にしてa/J ラインを引いた。

 縦安定の余裕率は両線の差分 n/Ja/Jb/J  であり前翼面積が主翼面積の25%  (Sf=0.25×Sw) とすると
  
 Sf/(Sw+Sf)=0.2  となり、それは図より
   
n/J=0.24−0.20=0.04  4% の余裕率となる。なお、安定が得られる範囲でb/J ラインに近い方が滞空性能は良くなる。

また図表の各ラインは  b/J= Sf/(Sw+Sf)

                   a/J=1.2×Sf/(Sw+Sf) で表され

     n/J= a/J−b/J=1.2×Sf/(Sw+Sf)−Sf/(Sw+Sf) となり

       =1.2×0.2−0.2=0.04 4% の余裕率は同じである。

 図中のa/Jは既存のカナード機のプロットに合わせてのラインである。

発射時に宙返りがしない範囲で、重心位置はb/Jラインの近くに選定する方が滞空時間を長くとれる。
 重心位置の設定はa/Jラインよりb/Jラインの近くで製作し、その実機を飛ばしながら調整をして確定し図面化をするのが良い。
 

   

 3) b/Jラインに重心位置があった機体の場合

数度だが、真上に上昇した機体が飛行姿勢のまま真下に降下するのを見た。なぎの無風に近い時、打ち上げた機体が前進せずホバリング姿勢だが早い降下速度で姿勢を変えず目の前を降りてくるのは、奇異な状況で印象的でさえあった。

なを、前記の4.重心位置2)重心位置のグレーゾーンに述べたカナード機の全機空力中心は、このb/J ライン上に重心がある場合に相当する。

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