ビーム管のスクリーングリッドにまつわる謎

ビーム管(5極管を含む)のスクリーングリッドの働きや使い方について、オーディオ関係では良く理解されていないように感じるので、
私の理解していることを忘れないうちに書き残しておきたいと思います。
私は特にテレビ水平出力管で遊んでいるので、その実験結果にも簡単に触れておきます。
(09/02/2012)

テレビ水平出力管などビーム管のスクリーングリッド電圧について

テレビ水平出力管をオーディオ用に使う場合、その最大スクリーングリッド電圧が、6L6などに代表されるオーディオ管に比べ低く、
3極管接続で使うにしても、ウルトラリニア接続で使うにしても、B+電圧が制限されてしまい、十分な出力が得られないという
問題があるといわれています。
私としては規格表に書かれている数字は、たとえば175Vなどが、どこから出たもので、電気的にどのような意味があるのか
ということから考えても、必ずしも守らなければならない数字とは思っていません。
今まで真空管を使った経験から見ても、スクリーングリッドの電圧が300Vでも問題はないはずです。だだし、絶対に最大損失電力を
超えてはいけません。絶対にです。
それともう1つスクリーングリッド電圧は、プレート電圧より高くなってはいけないということもあります。この状態が起こったとき、
スクリーングリッドに流れる電流が増え、スクリーングリッド損失が大きくなります。そして、許容限度を超えると管の劣化が起きます。
3結の場合強制的にEp=Eg2ですから、スクリーングリッド損失は無信号時に余裕があれば問題ありません。
ウルトラリニア接続の場合は信号のプラスの時に、プレート電流が増えると、スクリーングリッド電圧は下がり、損失の抑制がききますので、
無信号時の損失が十分に小さければ大丈夫でしょう。
ビーム管として使う場合は、たとえA級動作でも、最大信号時には無信号時の2倍位になります。AB1級ではプレート電流の変化より激しく、
最大10倍くらいまで行きますので、スクリーングリッドを焼いてしまわないようにご注意ということです。
(09/02/2012)

スクリーングリッドの耐圧

TV水平出力管のスクリーングリッドというのは、低いプレート電圧でも十分に電流が流れるようするのが主な目的で、実際には遮蔽格子
ではなく加速格子なのです。そしてビーム管というのは実に効率よくそれができるようになっていて、低いスクリーングリッド電圧、
少ない電流で十分なのです。つまりスクリーングリッドの感度がいい、逆に言えば、スクリーングリッド弱いということになります。
規格上のスクリーングリッドの耐圧は、スクリーングリッドで発生する損失電力で制限されているようです。つまり、TVの水平出力管は
商用電源を直接整流して使うトランスレスTVの時代に開発されたものであり、低いプレート電圧で大きなプレート電流を流す
ことができるように設計されているので、B+は100Vか200Vを使うことになっています。小型TVなら100V、大型TVで200Vです。
ですからスクリーングリッド電圧は100Vか高くても200Vになります。それでちゃんと目的の動作ができるようになっていて、それ以上
スクリーングリッド電圧は必要ないのです。代表的な管の最大スクリーングリッド電圧を上げると、6BQ6で200V、6CD6で175V、
6CB5Aで220V、6DQ5で190V、6JS6Cで220V、6KD6で200V、ヨーロッパ系の25E5で250V、40KG6で275Vです。一方プレートの方はフライバック
トランスというインダクタンス負荷をしょってパルス動作するので、何KVもの耐圧が必要で、そのためほとんどの水平出力管は
トッププレートになっているわけです。シングルエンドの水平出力管は日本では使われませんでしたが、6BQ6から発展した
6AV5のような管でも>ピン配置が6L6/6V6とは違って、プレートピンの両端はスペースになっています。
今手元にある水平出力間6CB5Aとその発展系であるといわれているオーディオ管6GB8を比べても、6CB5Aのスクリーングリッドに400V
加えても耐圧が低くてスパークしてしまうようには見えません。しかしの替わりにそのまま使えるかというとこれはだめです。
6CB5Aの最大定格はEsg220V、Psg4W、Pp24Wに対し6GB8はEsg400V、Psg10W、Pp35Wであり、まずスクリーングリッド損失、次にプレート
損失でかなり定格をオーバーしてしまいます。スクリーングリッド電圧の定格オーバーは、それだけでは問題ありません。

(09/02/2012)

スクリーングリッド損失の起きかた/スクリーングリッドから見た3結

ビーム管の平均プレート特性を見てください。プレート電圧とプレート電流、それにスクリーングリッド電圧とスクリーングリッド電流が
描かれています。注目してもらいたいのは、スクリーングリッド電流が増えるのはプレート電圧が下がったときだということです。
6CB5Aの場合、Ep175V、Esg175VでIp600mAに対しIsg35mAと6%位であり、プレート電圧がスクリーングリッド電圧より高ければ高いほど
このIpに対するIsgの比率はもっと少なくなります。
EsgがEpより絶対に高くならないようにするには、プレートスクリーングリッドを直接つないでしまえばいいわけで、
これがいわゆる3結です。
実例として今使っている12GB3/12GB7の3結アンプの数値を示します。
12GB7:Ip=54mA、Isg=3.7mA、Ep=Esg=220V、7%
12GB3:Ip=40mA、Isg=2.5mA、Ep=Esg=220V、6%
この使用例は残念ながら極めておとなしいほとんど規格内のものです。クリップするまで入力をあげても、電流計が少し振動する
だけで過大な電流が流れることはありません。
他の実例はおいおい追加してゆきます。
(09/02/2012)

プレート損失とスクリーングリッド損失の関係

3結にした場合のプレートとスクリーングリッド合計した場合の許容損失がどうなるか考えてみました。結果として、プレートだけの許容損失
の値にとどまることがわかりました。6L6GCシングルA1動作 Ep350V、Esg250Vのビーム管動作を例にとってみます。
無信号時と最大信号時でIp、Isgは変化し、最大出力時のほうが合計損失は小さくなります。
プレート入力:18.9W/23.1W、出力:10.8W、損失:18.9/12.3W
スクリーングリッド入力:0.625W/1.75W、出力:0W、損失:1.75W
合計損失:19.525W/14.05W
これはA1動作で、損失的には全く問題にならない軽い使い方です。もうひとつ厳しい使い方の例を挙げます。6AQ5 A1シングル
Ep=Esg=250V、ビーム管での動作です。
プレート入力:11.25W/11.75W、出力:4.5W、損失:11.25/7.25W
スクリーングリッド入力:1.125W/1.75W、出力:0W、損失:1.75W
合計損失:12.375W/9.0W
6AQ5プレート許容損失12Wぎりぎりの動作ですが、信号が入っているときのほうが楽ですね。しかし、ここで言いたいのは、
スクリーングリッドの損失が大きいときには、プレートの損失は小さくなるということだけです。つまり、スクリーングリッドの
最大許容損失とプレートの最大許容損失を足したような使い方は、ビーム管ではありえないということです。
したがって、管の放熱能力はプレートの最大許容損失だけあれば十分で、そのように設計されていると思います。
私たちが3結で使う場合はプレートの最大許容損失を超えないようにする必要があります。
これは実際に試してみても、意外と早くプレートが赤くなるのでわかります。
しかし、プレートの最大許容損失には別な面もあって、管の種類によって、意外と余裕のある場合もあります。これについては
別なページで触れています。(09/02/2012)

直列抵抗の必要性

テレビ水平出力管などビーム管を3極管接続(3結)する場合、スクリーングリッドに100Ω位の抵抗を直列に入れることが行われて
います。私が数年前に真空管の3結の実験を始めたころ、6GB3Aと6DQ5(このときの6DQ5のEp=Esgは約400V)で原因不明の発振が起きました。
無線をやっていたころを思い出し、パラスティック止めのつもりでスクリーングリッド100Ωの抵抗を直列に入れたところ、
発振が止まりました。

それでこれはよくあることかどうか調べたら、100Ωを入れるのは常識だとわかったのです。なるべく小さくしたかったので
実際に何Ω入れればよいか調べたら、そのときの6GB3で70Ω、6DQ5で30オームで発振が止まりました。きりのよいところで
100Ωで良しとしましたがそれにはもう1つの理由があります。スクリーングリッド電流を測るシャント(分流器)として100Ωだと
計算が楽になります。この100オームにテスタを2.5Vレンジにしてかませれば実際に流れているスクリーングリッド電流を
測定できます。今のテスターはどんな安物でも10KΩ/V位ですから、誤差はあまり出ません。この目的にはプラスティックの
ケースに入った安物の小型テスターが向いています。テスターにプレート電圧がかかっていますからね。
ということで、いつでもスクリーングリッド電流を実測できるので、スクリーングリッドが焼けるのを心配する必要はありません。
(09/02/2012)
100Ω直列抵抗のワッテージ(電力規格)ですが、スクリーングリッド電流が10mA流れるとして、電圧降下1V、それに10mAをかけると
10mWになります。ですから、1/4Wか1/8Wの小さなもので十分です。異常時のヒューズの意味もありますから、小さいほうがよいです。
私は年のせいであまり小さいものは見えないので、1/4Wを使っています。
(10/02/2012)
「この100Ωの抵抗による微小な電圧降下が、スクリーングリッド損失が過大になることを防いでいる。」ということが過去の記事などに
ありますが、1V以下の小さな電圧なのでそれはありえないと思います。このことは平均プレート特性をよくみればわかるはずです。
(12/02/2012)

実験結果1

2008年から2012年の実験の結果。

スクリーングリッドの実験

実験結果2

2012年の実験の結果。

スクリーングリッドの実験2



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