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アルキノオスの問いに自分の身の上をどこから話したらよいか迷いつつも、オデュッセウスはまず自分の名前をとうとう明かすことにした。
そして彼は自分に降りかかった数々の苦難の日々を打ち明けるのであった。
イリオスを陥とし帰国の途に付いたオデュッセウスの船団は、まずキコネス族の町イスマロスに辿り付き、彼らはこの町を襲い掠奪行為を働き仲間内で戦利品を平等に分配した。
即座にオデュッセウスは出航しようとしたが、他の者達は彼の言うことを聞かず、この地に居座り多くの家畜を屠って楽しんでいた。
そうしているうちに逃げ延びたキコネス人たちは、さらに強いキコネス人の応援を頼み攻めてきたのだ。
はじめのうちこそ踏みとどまっていたイタケ勢であったが、やがて戦況が傾き始め、各船6人ずつの戦死者を出し出港するのであった。
仲間の死を悲しんでいる間もなくやがて船団は海嵐に襲われ、2日2晩の間荒波にさらされ続け3日目の朝にようやく嵐が過ぎ去った。
その後9日間船団は漂流し続けたが、10日目になってロートパゴイ族の国に上陸した。
一同は陸に上がって水を汲み、船で食事を取ると、オデュッセウスが2人の男を選びこの国にどんな住人がいるか調査をさせる。
ロートパゴイ人は彼らを歓迎し、ロートスの実をご馳走してくれたが、このロートスの実は食べたら最後、故郷への望郷の思いを忘れこの地に留まりたくなる気持ちになってしまうのだ。
オデュッセウスは泣き叫ぶ仲間を無理やり船に乗せ、再び灰色の海へと櫂を漕ぎ出した。
やがて彼らは種を撒かずとも小麦や大麦、葡萄の木が育つキュプロクスの国へとたどり着いた。
その国のすぐそばには平坦な島があり一面の森林には野生の山羊が生息している。
彼らはこの島にに上陸すると隊を3つに別け、山羊を狩りだした。
イタケ勢の12隻の船にはそれぞれ9頭ずつの山羊が分配され、オデュッセウスの船にはさらにもう一頭追加される。
皆はこの地で豊富な山羊の肉を喰らい、キコネス人の国で掠奪した酒を飲み、日がな一日ゆっくりと滞在した。
次の日の朝、オデュッセウスは12名の部下を選び、王自らこの国の住人がどのような者達なのか調査に出かけることにした。
オデュッセウスは残った仲間に船の見張りをさせ、山羊皮の袋には極上の葡萄酒と食料を詰めてこの島の洞窟へと入っていった。
洞窟の中には誰の姿もなく、篭にはチーズがたっぷり乗せられ、檻の中には子羊と子山羊が入れられている。
これを見た部下達はチーズを手に入れ、家畜たちを船に乗せて逃げてしまおうとせがんだが、オデュッセウスは主の帰りを待とうと部下たちを制止した。
彼らは洞窟内で火を起こし神々に犠牲を捧げると、チーズを食べながら主の帰りを待つことにした。
やがて山のような薪を抱え、この洞窟の主人が帰って来たが、それは巨大な体をもつ一つ目の恐ろしいキュプロクスで、唯一の出入り口は大岩で塞がれてしまう。
勇者たちはとっさに洞窟の隅に隠れたがすぐ気づかれてしまった。
オデュッセウスは勇気を振るい、自分たちを客人としてもてなしてくれる様にと懇願したが、キュプロクスはその言葉を意に止めず、2人の仲間を捕まえると壁に打ち当て食べてしまった。
そして乳を飲み腹が膨れるとゴロリと横になる。
オデュッセウスはこの場でこの巨人の急所を剣で貫くことを思い巡らせたが、巨人が死んでしまっては入り口を塞いだ大岩をどかすことがかなわない。
次の朝になるとキュプロクスはまた2人の部下を捕まえ、自らの朝食にすると家畜を放牧する為に洞窟を出るとまた大岩で入り口を塞いでしまった。
オデュッセウスはこの窮地を脱するにはどうしたらよいものかと思案した挙句、洞窟内に巨大なオリーブの丸太があることに気づく。
彼はその丸太を6尺ほどの長さに切ると、部下に命じて滑らかに削らせる。
そして先を尖らせ、火にかざして焼き固めると家畜の糞の中に隠しておいた。
夕暮れになりキュプロクスは再び家畜を追って洞窟に帰ってきた。
そして2人の部下をまた捕まえ夕食にしてしまう。
オデュッセウスは椀に酒を満たし、キュプロクスに話し掛け酒を勧めた。
キュプロクスは1杯目をすっかり飲み干すと上機嫌で2杯目を所望し、オデュッセウスに名を尋ねた。
キュプロクスが3杯目を飲み干しかなり酔いがまわっているのを見計らって
「キュプロクスよ私の名前はウーティス(誰もいない)だ」
と名を告げた。
するとキュプロクスは
「ウーティスよ。それではお前を喰うのは一番最後にしてやろう」
というと仰向けに転がって、そのまま深い眠りについてしまった。
オデュッセウスは用意していた丸太を火に掛け真っ赤に熱し、仲間と共にキュプロクスの一つ目を思いっきり突き刺した。
さらにオデュッセウスは突き刺した丸太をぐりぐりと回す。
キュプロクスは凄まじい悲鳴を上げ、丸太を目から引き抜くと他のキュプロクス達に呼びかける。
声を聞いたキュプロクスたちは
「ポリュペモスよどうした?何があったのだ!?誰か人間がお前の家畜をさらおうとしたか、それともお前を殺そうとしているのか?」
「仲間たちよ!俺を暴力ではなく、たくらみで殺そうとしているのはウーティス(誰もいない)」
「お前に暴力をふるったものがいないのならば、それはゼウスが放った病であろう。せいぜい父神ポセイドンにでも祈るしかないな」
集まったキュプロクスたちは、そう言い残すとそれぞれの洞窟へと戻ってしまった。
するとポリュペモスは手探りで入り口へと向かい、大岩をよけると両手を広げて座り込んだ。
人間たちが家畜たちにまぎれて外に出ようとするのを防ぐためだ。
どのようにポリュペモスを欺き外に出るか方法を思案した挙句、3頭の羊を藤蔓でしばり、その真ん中に人間が隠れ外に出ようというものであった。
オデュッセウスのみは羊の中でもとりわけ立派なものに単独しがみ付くことにした
朝になり、洞窟から家畜たちはいつものように外へ出て行く。
ポリュペモスは羊の背中を一頭ずつ確認するが、隠れている人間たちに気がつくことはなかった。
無事洞窟から脱出し、羊から降りたオデュッセウスは仲間たちを縛っている蔓を解き放つ。
船に戻ると仲間たちは喜んで出迎え、羊たちをも船に乗せると直ちに出航した。
ある一定の距離まで漕ぎ出すと
「キュプロクスよ!お前を目暗にしたものは誰かと聞かれたらこういうが良い。イタケの領主、ラエステルが一子オデュッセウスに潰されたとな!」

部下たちが止めるのも聞かず、得意になったオデュッセウスがこう叫ぶとポリュペモスは昔オデュッセウスによって盲目にされるという予言を思い出し悔しがると、父であるポセイドンにオデュッセウスが帰国できる定めにあるのであればどうかせめてその帰国を遅らせ、様々な苦難に遭うようにと祈りを捧げた。
そしてポリュペモスは大岩を持ち上げると船に向かって投げつけた。
キュプロクスの投げた大岩は、あやうく船の切っ先をかすめ海に落ちたが、大海原の支配者ポセイドンは息子の望みを聞き届け、この先オデュッセウスに多くの苦難を与えることになる。
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