第一章・運命
パリスに討たれるアキレウス

メムノンがアキレウスの刃に倒れ、トロイア勢は一斉にイリオス城内に逃げ込もうとスカイアイの門に雪崩れ込んだ。
アキレウスはその機に乗じ兵たちに紛れスカイアイの門の中についに突入することに成功した。
トロイア勢の中にはアキレウスを阻むことができる武将はもういない。イリオスの落城のときが来たかと思われたその時、1本の矢がアキレウスの唯一の弱点でもある右のかかとを貫いた。
そして2本目の矢がアキレウスの心臓に深く突き刺さったのであった。
矢を放ったのはアポロンに導かれたパリスだった。矢を射掛けられたアキレウスは巨木が切り倒されるがごとくその場に激しく倒れこんだ。


豆知識:アキレス腱の由来

アキレウスの唯一の弱点がかかとであることが“アキレス腱”の由来であることは有名であるが何故そのかかとが弱点であるかというとそれは彼の出世時までさかのぼる。
アキレウスの誕生の時すでにこの戦争に参加した場合必ず戦死することが運命付けられていた。
名誉ある戦死か、無名のまま祖国に老いるか、息子のこの呪われた運命に母である女神テティスは彼を不死身にさせようと夜な夜な冥界のスティクス河に浸したとも、限りある命の部分を焼き尽くそうと火に投じたともいわれる。
その時テティスが掴んでいたかかとの部分だけが不死にならなかったという説やかかとに木の葉が舞い降りてその部分だけが不死身にならなかったなどいろいろな説がある。
とにかくこの秘密の行為は不完全のうちに女神の夫でありアキレウスの父親であるペレウスに見つかり中断されてしまった。そしてテティスはアキレウスを残し海に帰ってしまったのである。



アキレウスを不死にしようとするテティス achilleshandingovertochiron.jpg

倒れたアキレウスは自らに課せられたいまわしい運命を呪い、突き刺さった矢を引き抜くと颯爽と立ちあがる、そして尚もトロイア勢に切り込んで行った。
アキレウスは次々にトロイアの戦士たちを討ち取っていったがすでに彼には死の影が覆っていた。
アキレウスの体には敵軍を殲滅するべく熱い闘志がいまだみなぎっていたが、突き刺さった矢の傷はどんどん彼の体を蝕んでいったのである。
いよいよ最後の時が訪れるとアキレウスはトネリコの槍にすがりながらトロイア勢に呪いの言葉を浴びせた。そしてそのまま屍の上に倒れ付したのである。
こうしてアカイア一の英雄は生まれたときからの運命から逃れられず、その雄々しき命の火を散らしたのであった。



豆知識:アキレウスとポリュクセネー

アキレウスの最後については上記で語ったが、ここにまた別の伝承がある。
アキレウスは先にトロイアの王女であるポリュクセネーを見て想いを寄せていた。
そしてポリュクセネーとアポロンの社で密会していたところをトロイア側の策略でパリスに射られたという。
この王女ポリュクセネーの運命はトロイア落城の際語られる。



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