第二章・一騎打ち

大神ゼウスはテティスと約束はしたもののどうしたら良いか思案していた。 その結果ゼウスは“凶夢”を呼び寄せアガメムノンの夢枕に立ち“神々の意見は皆一致した。今こそイリオス城を攻め陥すことができよう。ただちに戦の準備にかかるように”と告げさせた。
アガメムノンはだまされているとも知らず、これこそ神事と思い会議を開いて皆を招集した。士気を試すためアガメムノンが“9年間も攻め続けたが一向にイリオスは落ちない。もうあきらめて故郷へ引き上げよう。”と問い掛けると、一同は皆怒り本当に引き上げそうになった。 オデュッセウスが慌てて皆を引き止め、アカイオイの士気を高めた。
一方、イリオスには虹の女神イーリスがアカイオイの進軍を伝え、総大将ヘクトルの指揮の下、アカイオイを迎え撃った。


トロイアの城壁の上のヘレネ
両軍が互いを目前とし、今にも切り結ぶかと思われたときパリスがイリオス勢の先頭に現れ、アカイオイの武将の誰でも良いから自分と一騎打ちしてみろと挑発した。
妻を奪われた恨みを晴らすべき絶好の機会とメネラオスが獲物を狙う猛獣のごとく戦車から地上へと飛び降りた。 パリスはメネラオスの姿を見ると恐れおののきイリオス勢の間に隠れてしまった。
それを見たヘクトルはパリスを激しくののしった。 兄ヘクトルにののしられ覚悟を決めたパリスはヘレネと全財産をかけた一騎打ちを約束し、両軍に剣を収めさせた。
この一騎打ちは両軍が見守る中で行われ、イリオスの城からは老王プリアモスが立会人として現れ、ヘレネさえも観戦に出てきた。
そのヘレネの姿を見たトロイア側の長老たちは“これほどの美女のためならば長い間戦をすることも無理の無いことだ。しかしこれほどの美女ではあってもやはり国許へ帰らせるが良かろう。”と囁いた。
プリアモスは長老たちの言葉を気に求めず、ヘレネを近くに呼び寄せアカイオイの武将たちの名前を聞いていた。


やがて一騎打ちがはじまりまずはパリスが槍を投げたが、メネラオスの大盾で防がれた。その後メネラオスがゼウスにパリスを討ち取れるように祈り槍を投げると、パリスの盾を貫きパリスのわき腹をかすめた。 メネラオスは剣を抜きパリスの兜に撃ちつけると、太刀は折れてしまった。その後メネラオスはパリスの兜をつかみアカイオイの陣に引きずり入れようとした。
この有様を見ていた女神アフロディテは、兜のあご紐を断ち切り、そのままパリスをイリオス城の中の彼の寝所へ連れ去った。そして侍女に化けヘレネを呼んできた。ヘレネはパリスを見ると呆れてののしった。 パリスは“メネラオスは神に守られていた”と言い訳しヘレネを愛の床にいざなった。

パリスとヘレネ

その頃、戦場ではアガメムノンがメネラオスの勝利宣言を行っていた。
それを天上で見ていた大神ゼウスは“パリスにはアフロディテが常にそばに付き添い守っているのに、メネラオスの味方についているはずの2人の女神は呑気に見ているだけだ”とヘラとアテナをからかった。 それに付け加え“メネラオスの勝利は明らかなので、このまま両軍に平和をもたらしトロイアはこのまま無事に永らえさせ、ヘレネはメネラオスに連れて帰らせよう”と言うと、トロイア側に痛い目を合わせたいと思っているヘラがゼウスに反論した。
ゼウスはアテナに命じ、イリオス側から契約を破り、戦いを再開させるように仕向けさせた。
女神はイリオス勢に紛れ込み、弓の名手パンダロスをそそのかし、メネラオスに射掛けさせた。矢はメネラオスの甲冑を貫いたが、肌に突き刺さる寸前にアテナが抑え留めた。しかしメネラオスの体からはおびただしい血が流れ出し、それを見たアガメムノンは憤慨した。 イリオスを滅ぼすと叫び、メネラオスは名医マカオンに治療させ、アカイオイを鼓舞し合戦へとせきたてた。

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