その11 ガチャピンと・・・〜ひよどり編

 

2003年2月7日ヒヨドリのムク(ムックではない)が家族の一員になりました。

 

彼が家に来るきっかけとなったのは昨年11月頃の事だった。

私は意味も無く里親募集サイトを見ていた。

新しく家族を迎える予定は無かったが、何気なく漂って『色んな鳥さんが新しいお家を探しているなぁ〜。

この子達が皆ウチに来たら私は(あくまでも私が!)幸せだろうなぁ〜』などと淡い妄想を抱いていたのだ。

 

そこで見つけた『ヒヨドリの里親募集』の書き込み。

【夏頃に傷付いたヒヨドリの雛を保護して育てましたが、事情があり飼育が出来なくなりました。手乗りになってしまい自然に帰す事が出来ません】

しかし、その書き込みの後には「野鳥の飼育はいけません」の書き込み。

・・・野鳥でも、ちゃんと許可さえ取れば大丈夫なのに・・・。

でも里子に出すとしたら手続きとかややこしいのかな? なんて事を考えていた。

そして、あるサイトでは『野鳥の里親募集を禁止します』との管理人の言葉もあった。

冷たいように感じもするが、法律が関係してくるし、問題が大きくややこしくなる前に適切な判断だとは思う。

そしてヒヨドリの里親募集書き込みは姿を消した。 私は、ずーっと『ヒヨドリは無事に良い人に会えただろうか?』

と言うのが引っ掛かっていた。 そして年明けまた意味も無く里親募集ページを漂っていた私の目に

同じ方のヒヨドリの里親募集の書き込みが目に飛び込んだ(以前とは別サイト)。

 

【去年の夏の初め、はねを傷めたヒヨドリの雛を拾い、野性に返すこころみはしたものの、いまではべたなれ手乗りになってしまいました。

事情によりずっと、飼ってやることができなくなりそうなのです。

本心は死ぬまで面倒をみてやりたいのですが。

心優しいひよどり好きなかた、里親になって下さい。遠方でも連れて行かせていただきます。

北は新潟付近まで南は大阪くらい。ヒヨドリの負担を考えてできるだけ近くの方に里親さんになって貰いたいと思っています。

こちらは長野になります。(以下略)】

 

その下にも「ヒヨドリの里親募集はいけない」とか「許可を取ればいい」だとか里親募集に関係無い書き込みが・・・。

私はこの手の『余計なお世話』的な書き込みが嫌いなのだ。

 

野鳥の募集書き込みをするからには、それなりの許可を得ているのが常識だろうし、それは里親を申し出る人と話し合い忠告すれば済む事だ。

それより何より、なぜ募集ページに『里親希望』以外の書き込みが???

数人がそんな事をすればスレッドはどんどん長くなり、他の人の書き込みが押し出されて迷惑になると言う事は考えているのだろうか?

そのために可愛い鳥さんが良い出会いをするためのチャンスを邪魔している事に気付いているのだろうか?

それが本当に鳥好きのする事だろうか? 私には、一時の感情で自分の意見の押しつけにしか見えない。

そんなに気になるのであれば、メールアドレスが記載してあるのだから本人に直接言えば良いのだ。

関係のない書き込みがまた別の関係無い書き込みを招き、最終的には話の論点がずれたり、大勢で1人を攻めたりする場面 は度々目にする。

これってなんだか、学生時代にあった『いじめ』に似てるよな・・・。連鎖反応ってやつ?

自分が『鳥好き』だと胸をはって言えるのであれば、他の鳥さんへの迷惑も考えて、その手の関係無い書き込みはメールでするべきだと私は思う。

 

そんな事を考えながら私は旦那に『このヒヨドリさん前も募集しとったけど、まだ里親見つかって無いみたい。でも、なんか急ぎみたい』

と何気なく言った所、突然旦那が『群馬ぐらいまでなら行けるな・・・。』

私『はぁ???』

旦那『長野から中間地点の群馬ぐらいまでなら迎えに行けるでメールすれば?ウチで引き取ったらええやん』

私『・・・じゃあメールしてみようか?』

 

次の日ヒヨドリの飼い主さんから電話をもらい話をした。

それは、メールはしてみたものの「納得の出来ない理由であれば断ろう・・・」と思っていた私を充分納得させる理由だった。

 

ヒヨドリの飼育許可に付いてだが、『ヒヨドリは狩猟対象になるので許可は必要ない』との事。(雛は許可がいります)

しかし今回の場合は譲り渡しになるのだから改めて県の鳥獣保護課へ連絡。

やはり許可などは必要なく、飼育していてもなんら法に触れないとのこと。

そしてムクと名付けられたヒヨドリが無事我が家に来たのだが、来る途中大変だったらしい。

 

ムクは人ごみが初めてで、もちろん電車もはじめて。

そのためかたくさんの人間が怖いらしく、カゴの中で暴れてクチバシの根元などを擦りむいて怪我しているのだ。

タダでさえ怖いのに、人間の方はカゴに入ったヒヨドリ珍しさに近付いて来るのだ。

そんな大変な長旅を終えて我が家にムクは来た。

 

元親さんがいる時に放鳥してみたのだが、本当によくなついている。

肩や頭に乗って来る。

その上芸も出来る! ティシュを丸めて「ポン」っと投げるとパクっと加えてポイ。

素晴らしい!! 所がだ、元親さんが帰ったあと放鳥してみたが、怖がってる。

予想はしていたが、ムクの不安が伝わって来る。

我が家は子供2人に大人2人。

狭い部屋の中ではムクの嫌いな人ごみがあっと言う間に出来てしまう。

しかし、これからここで生活してもらうのだから慣れてもらわなきゃ困るのだ!

ムクの為だけに環境は変えれないのだ。

しかし、お互い気楽に過ごせるような空間は作っていかなければならない。

 

ムクも我が家にすっかり慣れ、溶け込み、居て当たり前の存在になっていた2003年2月26日(水)

朝から我が家はにぎやかだった。

スチールラックの上段にいる文鳥達が出せ出せ!とチュンチュン言う。

その隣のカゴでは瑠璃頭のミチルがピッピッピッと機嫌よく鳴く。

スチールラックの下段ではオイルヒータの横に置いてあるカゴの中からムクはこっちをジーッと見て全身を嬉しそうに震わせる。

私が『ムクおはよう』っと声をかけ、鳥用のドライフルーツを与えると嬉しそうに食べ『ピーピー』もっとくれと言わんばかり催促するのだ。

その後私は、鳥たちのいる部屋のソファーで毎日の習慣である二度寝を始めた。

 

息子がTVを付け「笑っていいとも」のオープニングが流れる・・・。

『おかぁちゃん!お昼なったで!ご飯作って!!』息子に叩き起こされた。

我が家ではお昼になると陽の当たる窓辺にカゴを並べるのだが、その日もいつもと変わらず、窓辺にカゴを並べた。

ムクは日光の下で機嫌よく『ヒィーヨヒィーヨーピューウィピュ−ィ』と歌っていた。

ボーッとしているとあっと言う間に時計が午後3時を指したので鳥かごをスチールラック内に戻し、オイルヒーターのスイッチを入れ出掛けた。

毎週水曜日は娘の習い事があるのだ。

 

 

習い事が終わり夜7時半過頃に帰宅。

家の中が妙に静かだ。

朝だろうと夜だろうとウチの子達は関係無く騒いでるのに何の物音もしない。

なんだか居心地が悪い・・・。

私は遅い夕飯の支度をしながら息子に『ムク出したって。』っと台所から指事を出す。

カゴを開けるためのガチャガチャと言う金属音のぶつかる音がする。

いつもなら『バサバサ』と大きな音を立てて飛び出してくるはずなのだが羽音がしない。

私は不安にかられながらムクのカゴを覗き込む。

『!!!』

ムクは羽を膨らませてボーッと何かを訴えるようにこっちを見ていた。一目見て『ヤバい』と判る状態だ!

カゴをすぐにファンヒータの前に移動させ、直接風が当たらないようにブランケットで風を塞ぎ、カゴを前後させてムクの羽が落ち着く温度を探した。

『27度』これが、今のムクにとって最良の温度らしい。

体重は減っていないかどうか手で持って確かめてみる。

いつもと変わらずズッシリして足もしっかりしている。

その時に糞をしたのだが、色はコールタールのように黒く、正座していた私の両膝と床に飛び散った。

ティッシュで拭いてみるとちょっと粘り気もある。

慌てて病院へ電話をしてみるが誰もで無い。

『とにかく食べさせて体力付けさせなきゃ!』ムクの大好きな『鳥用ドライフルーツ』を与えてみると嬉しそうに食べた。

その後餌のドッグフードを2つ3つ口に入れ、水を飲む。

『大丈夫?かな???』

しかし、糞の状態を考えると目が離せない。

適当に子供達のご飯の用意をして食卓に座らせると、私はムクの傍について見守った・・・。

見守る事しか出来ないのはなんて歯がゆいのだろう?

こんな時おとぎ話に出て来る『聞き耳頭巾』があれば・・・。

様子を見ているとどんどんムクの目が虚ろになってきた。

目のソバに指を近付けて見ると反応が無い!見えていないのは明らかだった。

羽を広げはじめ息も荒くなり始めた。

鳥は調子の悪い時は低血糖に注意しなければならないので、ブドウ糖をあげようと手に抱き上げた。

『軽い!!』

私の今までの経験から言うと死ぬ寸前の鳥は急激に軽くなる。

ムクの元親さんに慌ててメールをしたが、文鳥などと比べて体の大きい子なので体力はあるだろう。

『明日の朝まで持ってくれれば・・・』

願いも虚しくムクはバサバサという羽ばたきと共に止まり木から落ちた。

慌てて拾いあげると私の手の中でゆっくりと首を垂れていった・・・。

娘は号泣した。

ムクと大の仲良しだった息子は他の鳥たちの所に行きムクの死を報告した。

原因は判らないが、何か誤飲したか、病気か、寄生虫かもしれない。

昔、雀のチュン太を飼っていた時に癲癇発作のような症状が度々出たので病院に連れていった時

『野鳥には寄生虫がいて、人間が育てると何故かそれが悪さをしはじめる』

っと言う説明を受けた事がある。

ただ、この医者は『野鳥なんとかかんとか(忘れた)』と立派な称号と看板を掲げている割には、桜文鳥のピピが脱腸した時に血の固まりと間違っ

て腸を切り落とそうとしたり、どんな病気でかかっても赤い栄養剤のみ処方するなどかなり怪しい所が多いので、真偽の程は定かでは無い。

 

次の日朝娘が目を真っ赤に腫らして起きて来た。

『学校休んで一緒にムクを埋める』っと言う。

休ませようと思ったが、今どき塾にも行っていない娘が勉強に遅れたら取り戻すのが大変なので、説得して学校に行かせた。

娘は『がんばって勉強してムクみたいな子助けれるような獣医さんになるわ・・。』

っと力無く登校していった。昨夜病院に電話が繋がらなかったのがよっぽどショックだったらしい。

 

昼前に有休を取った旦那と息子と3人でムクを庭に埋めた。

その時はさほど辛くもなかったのだが、主のいないカゴを洗っている時に悲しみとムクと元親さんに対しての申し訳無さで涙が溢れてきた。

・・・原因のハッキリしない死と言うのはなかなか受け入れれない、自分の中で上手く消化出来ない。

ムクは幸せだったのだろうか?多分一生残る疑問だと思う・・・。

 

 

 

 

 

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