うさぎの子宮癌 (子宮ガン)

症例1   生後6ヶ月齢

ちょっと見ずらいですが、正常の子宮です。
子宮は細く、脂肪も少ないです。
症例2   2歳齢


子宮はよく発達し、異常はありません。
子宮には脂肪がたくさんついています。

症例3   2歳6ヶ月齢

臨床症状は異常なく、避妊手術の依頼にて手術を行った。
左側子宮に腫瘤が確認された。(写真では下方の膨らんでいる部分)
子宮腺癌であった。病理組織検査では、転移の可能性は低いという結果であった。

このタイミングで手術できて、幸運であった。
症例4   6歳齢

元気が最近ないとのことで来院。
血液検査にて貧血が確認され、レントゲン検査にて左側子宮に腫瘤確認。手術を行う。
左側子宮に腫瘤があった。(写真では、右側の腫大部)
平滑筋肉腫という種類の子宮ガンであった。
転移の可能性は要注意という結果であった。
症例5   6歳齢

両後肢がふらつくとのことで来院。
数日、治療行っている間に血尿を確認する。
子宮ガンを疑い、手術を行う。
3っの腫瘤が認められた。子宮腺癌であった。
この症例は手術の3ヶ月後、肺に転移が認められ、
術後10ヶ月に亡くなりました。
症例6   6歳齢

食欲不振、呼吸困難、血尿にて来院。
レントゲン検査にて、子宮の腫大と肺転移像を確認。
来院後、10日後に亡くなり、解剖させていただきました。
左図は開腹した写真です。
左側が頭で黒色の部分が腸(盲腸)で、中央の腫瘤は由来不明の転移腫瘤です。右側の二本に見えるのが、子宮です。
 
症例6 の摘出した子宮です。
ボコボコと こぶ状の塊が確認できます。
腺癌でした。
症例6 の肺です。

多数の転移性腫瘤が認められます。
白っぽい塊がガンです。
ウサギの子宮ガンは雌ウサギにおいて、最もよくみられる腫瘍です。

2歳以上で発生が認められ、転移もよく起こります。
すなわち、個体差はありますが、2歳を越すと、いつ子宮疾患が発生してもおかしくないという状況です。

症状は、ごく初期には、血尿で(膀胱からではなく、子宮から)、それ以外にはあまりはっきりしません。
そこで、様子を見てしまうと、1〜2年後に肺転移により、呼吸困難を起こしてきます。
この時には、手遅れとなります。   (転移をしている場合は、普通、手術の対象となりません。)

治療は、早期発見し避妊手術する。 あるいは予防的に避妊手術を行っておくことです。
生後、6ヶ月ぐらいが、体も出来上がり、子宮についている脂肪も少ないので、手術しやすいです。
(手術しやすいということは、手術のリスクが低いということです。)
高齢になってからの手術はリスクが高くなり、
腫瘍が発生している場合は、すでに転移しているかもしれません。
もちろん、手術をするか否かは、自由です。 よく検討し、お考えください。

例えば、雌の中高齢で初診時に呼吸困難であれば かなりの確率で肺転移を疑います。
そして、だいたい、肺に転移像が確認されます。(症例6のように)

先日、10歳の雌ウサギが血尿をしたとのことで来院しました。案の定 下腹部に腫瘤が触れました。
しかし、胸部レントゲンでは転移は確認できず、血液検査でも 大きな異常は見つかりませんでした。
そして、リスクはありましたが飼い主の希望により、手術を行いました。 
無事に手術は終了し、すぐ元気になりました。
組織病理結果でも子宮ガンでしたが、転移の証拠は見つからず という結果
絶対に転移していないともいえないが、 間に合ったか? という感じです。

下に症例紹介致します。
ウサギの子宮は簡単に説明すると、Yの字状の形をしており、その先に左右の卵巣があり、下方には膣があります。
写真はクリックしてください。

(無断で引用、転載を禁ず)
   アンドレ動物病院