私の宝物          伊藤 祥子    2007年12月

「 今のあなたの宝物は なんですか? 」
今の私は 間違いなく 「この子」 と答えます。

動物好きの家庭で、 幼いころから いろんな生き物とともに過してきた私ですが、
当時、この質問をされて、 その時飼っていた生き物を 「宝物」 と答えたかと考えると・・・
きっと違ったものを答えているでしょう。

「 この子は あと1年生きられないかも・・・・・ 」 と言われた柴の仔犬も 
今は 5歳の立派な雄の成犬に 成りました。

その彼との出会いは 5年前の9月でした。
当時、私は犬の行動学に興味を持って勉強をしていました。
勉強をすすめるうちに 「自分自身で子犬を成犬になるまで 育て上げてみたい」 と思うようになり、
真剣に子犬を迎えることを考えていました。

どんな犬種が自分の性格、ライフスタイルにあっていて、また、行動学の勉強になるのか?・・・
いろいろ考えて、 「 トイプードルが欲しい!! 」 と決め、
プードルのブリーダーさん探しを始めていた ある日、 彼との出会いが待っていました。

当時働いていた動物病院で、近所に新しくできたペットショップに
仔犬のワクチン接種と健康診断を依頼され 初めて往診に行った日のことでした。

お店の裏側で これから店頭に並ぶであろう小さな仔犬たちを診察していると、
一頭の柴犬の仔犬が 私のもとに連れられてきました。

その子は  少し前に売られて行ったのだが、 今、返品されてきた   とのことでした。
理由は買い主さんが ワクチン接種を受けに動物病院に連れて行ったところ、
心臓から雑音が聞こえ、

先天性の心臓病を患っているから ペットショップに相談して別の仔犬に替えてもらったほうが良い 
と言われた  とのことでした。

わたしは それを聞いた瞬間、  この仔犬の将来はどうなるのだろうか?! と想像しました。
そして、 このかわいそうな仔犬との出会いに運命を感じ、
  彼は 「 うちの子 」になりました。

そんな突然のハプニングで 「この子」 を迎えることになったのですが、
飼い主として、獣医師として、 彼にしてあげられることは なんでもしようと決心しました。
その時の気持ちが 「 うちの子 」を 『 私の宝物 』 にしたのだと思います。

母校の大学病院で、心臓の精密検査をしていただいたところ、
 「 もしかしたら、 1年も生きられないかも・・・・ 」 と言われたのも理由かもしれません。

以降、 「 彼が幸せな一生を送る 」 を目標に 私の生活は彼中心の生活に変わりました。
仕事に行くときも、勉強に行くときも一緒に連れて行き、
お休みの日は 犬を同伴できる公園やお店に行きました。

気がついたら、犬大好き飼い主に・・・  というか 親ばか?!に・・・・・笑。

そして、「 彼が幸せ 」 というより 
彼のおかげで 「 私が幸せ 」 になっているのに気がつきました。
落ち込んだとき、悩んだとき、どんな時も 私のそばに 彼は居てくれて 私を いやしてくれました。

彼には   本当に感謝   です。

今年、彼は5歳を迎えることができました。
現在のところ、毎日 薬は飲んでいますが、心臓病の症状は出ておらず、
家の中で食べては寝る 平穏な日々を送っております。

毎年、5月に彼の誕生日を迎えると 来年のこの日も 無事に祝えるといいなあ〜っ 
と思っています。

(当の本人は私の気持ちなども知らず、誕生日にもらえる特別な食事をおいしそうに食べるだけですが・・・)

彼は自分が心臓病であるという自覚はなく、飼い主である私に特別な感情などないかもしれませんが、

私にとって 「 この子 」 は 大切な 「 私の宝物 」 です。

これからも、 「 彼が幸せな生活を送れること 」 を考え、 
 「 私も幸せな生活を送る 」  ことを目標にしていきたい  と思っています。



  伊藤 祥子