アンドレ動物病院
* はじめに
フェレットに限らず、膵臓は十二指腸に沿って存在し、
膵液の分泌(外分泌)と膵臓に散在しているランゲルハンス島と
呼ばれる組織からインスリンなどを分泌(内分泌)している重要な組織です。
インスリンはいろいろな組織の細胞にブドウ糖の取り込みを促進し血糖値を
下げる働きをしています。
健康であれば、一定に範囲に血糖値はコントロールされています。
たとえば、糖尿病はインスリンがうまく出ない、あるいはうまく機能しない
ことにより、細胞内にブドウ糖が取り込めず、血糖値は正常より上がってしまう
病気です。
* 原因
インスリンを分泌している膵臓内のβ細胞が腫瘍化(インスリノーマという)し、
大量のインスリンを分泌することにより低血糖が引き起こされ、
いろいろな症状が発生します。
なぜ中高齢のフェレットに多発するのかは、まだ判っておりません。
* 症状
1 元気がなく、寝てばかりで活発でなく、ぼんやりした顔
2 よだれ、鼻水がめだつ
3 フラフラして足腰がしっかりしていない時がある
4 口を両手でかきむしるしぐさをよくする
5 体重減少
6 衰弱、虚脱、痙攣、昏睡
上記の症状は低血糖によるもので、時に死亡する可能性があります。
症状の程度、進行には個体差があります。
ごく軽度の症状では飼い主が気がつかない場合もあります。
* 診断
1 上記の症状を検討
2 低血糖値の確認
正常血糖値は約80〜140mg/dlで70未満の場合疑われる。
ただし、一回の検査では不確定の場合がある。
絶食後の血糖値はより確定的である。
低血糖だから絶対インスリノーマであるとは言えない。
3 血中インスリン濃度の測定 正常値より高い。
4 試験的開腹 肉眼的に膵臓を確認する。
5 よっぽど大きくなければ、レントゲンやエコー検査では確認しずらい。
* 治療
外科治療と内科治療がありますが、残念ながら完治することはありません。
フェレットがいかに楽に長く残りの時間を過ごせるかが目的になります。
1 開腹手術を行い膵臓の異常な部分を切除する。
進行を(死亡までの時間)遅らせることができます。
ただし、異常な部分が肉眼で判らない場合があります。
2 薬を投与し低血糖の症状を抑える。
しかし、腫瘍の進行を抑えることはできません。
3 低血糖が発生しないように注意する。
・ 頻繁に食餌を与える。
・ 糖や炭水化物の多い食物は避け(インスリン分泌を刺激する)、
高タンパク質の食物を与える。
4 痙攣、虚脱時(低血糖)の治療
咬まれないように注意して、蜂蜜、シロップなどを歯肉につけなめさせる。
(血糖値を一時的に上げる。)
* おわりに
現在、個体差はあるが徐々に進行して他の臓器への転移も発生し、最終的には
亡くなる可能性が高いです。(他の疾患の併発もある)
飼い主として、フェレットにとって辛い低血糖の状態を
発生させないよう注意してください。
* 当院では
インスリノーマの症状が疑われた場合、血液検査を行い血糖値などを測定して
検討いたします。
低血糖でインスリノーマが疑われた場合、飼い主様にインスリノーマという病気を
よくご理解していただきます。(例をあげて説明)
外科治療をするのか、内科治療で行くのか 検討御相談いたします。
外科治療はインスリノーマで亡くなる可能性を低くできます。(延命効果あり)
内科治療は毎日投薬しなくてはなりません。