フェレットの副腎疾患

* はじめに
フェレットの限らず副腎は腎臓の上方(頭側)に左右二個あり、
大きくはありませんが、いろいろなホルモンを分泌している重要な組織です。
一般に副腎は二層構造になっており、
内側は髄質、外側は皮質と呼ばれており
それぞれ分泌するホルモンが違います。

* 疾患の原因
中年齢以降、左右どちらか、または両方の副腎が異常になり多量に
ホルモンを分泌(フェレットの場合性ホルモン)することにより
いろいろな症状が発生してきます。
組織的分類として、過形成(良性)、腺腫(良性)、腺癌(悪性)に分けられます。
フェレットにどうして副腎疾患が多いかは、幼少期の去勢、避妊が疑われています。

* 症状
1  進行性脱毛  対称性で尾、腰、腹、背より全身に広がっていく
2  体にかゆみ  体が痒くなり ガジガジとかじる
3  やせる     筋力に低下
4  体臭の増悪  体臭がきつくなる
5  乳頭の腫大  下腹部の脱毛と乳頭が目立つ
6  メスの陰部腫大  陰部が腫大して 分泌も目立つ
7  オスの前立腺疾患  前立腺が腫大して排尿をしぶる
8  便が細くなる  前立腺が腫大して圧迫され 細くなる
9  複数で飼育の場合 他に乗られたり、乗ろうとする
10 病状が進行してくると貧血してくる

上記の症状は必ず見られるわけではありません。
メスの場合、卵巣による発情と鑑別する必要があります。

* 診断
1  上記の症状を検討
2  触診、レントゲン検査、エコー検査により正常より大きくなった副腎を確認する
   ただし、大きくないから正常というわけではない。
3  副腎が多量に分泌している性ホルモンを血液検査にて測定確認する。
   ただし、測定費用は高価で不確実な場合もある。
4  開腹手術を行い、異常な副腎を切除し病理組織検査を行う。
   ただし、見た目異常でないように見える場合もある。

* 治療
1  外科的治療
  ・異常な副腎を完全に切除できれば、すばらしく治ります。
  ・大きければ摘出も困難となり、リスクも上がります。
  ・左側副腎は比較的切除しやすく、右側副腎は大静脈に付着しており
   完全切除は困難です。
  ・両側切除は普通生きていけません。
  ・開腹手術時に副腎を見ても異常であるのがわからない例があります。
  ・片方を切除しても、もう片方が異常になってくることがあります。
  ・摘出した副腎は必ず病理組織検査を行い確認しておきます。

2  内科的治療
  手術しない場合(飼い主が希望しない、手術に耐えられない、摘出困難)
  薬の投与で副腎の過剰なホルモンを抑制していく。
  ・ いろいろな薬剤が治療に用いられています。
  
  ・リュープリン療法(リュープリンという薬剤を投与します)
   癌を治しているわけではありません。症状を抑えているだけです。
   一ヶ月に一回リュープリンを注射し過剰なホルモンを抑制します。
   ほとんどの症例である程度の効果が認められます。
   効果の程度はその個体、時期により一定ではありません。
   (パーフェクトでは ありません)
   効果がないときは逆に相手(腫瘍)が強力であることを意味しています。

* おわりに
   副腎疾患かも? と思ったら、獣医師の診察を受けてください。
   副腎疾患可能性が高ければ 副腎疾患をよく理解してください。
   手術をトライするのか しないのか 決めてください。
   (決めるのは飼い主です)
   手術するときは リスク、再発、摘出困難などをよく理解してください。
   内科療法は癌を治しているわけではありません。
   他の疾患が(インスリノーマ、リンパ腫)併発することがよくあります
   外科も内科もしないのはもったいないです。
   せめて内科治療はしてください。

* 当院では
   副腎疾患の可能性が高い場合、まず飼い主様によく病気をご理解して
   いただきます。(例をあげて説明)
   外科的に副腎を摘出するのか、内科的に治療していくのか検討して  
   御相談します。
   外科治療において、異常な副腎がうまく摘出されるとアットいう状態で
   症状が改善します。
   ただし、残っている副腎がまた腫瘍化することがあります。
   内科治療において、初期は良好な治療結果が得られますが、
   腫瘍が強大になると効果はだんだんに薄れます。





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